「役不足」の意味
「君では役不足だから、このプロジェクトには参加させないことにした」というのは、次のどちらの意味でしょうか?
A. 君の能力では役に立たない。だからプロジェクトから外した。
B. 君の能力をこの程度のプロジェクトで使うのはもったいない。だから外した。
正解はBです。
何となくAのような印象を受けた方も少なくないと思いますが、見て分かるようにAとBでは意味合いが全く異なります。2012年に行われた文化庁の「国語に関する世論調査」では、5割の人が「役不足」の意味を『本人の力量に対して役目が重すぎる』と理解していたことが明らかになりました。
何かのプロジェクトを割り当てられた時に、「役不足ですが頑張ります」などと言ってしまうと、本来の意味を正しく理解している人には「この程度のしょぼいプロジェクトやらされるなんて」という意味に聞こえているわけです。(※ 実際には「こいつ、意味分からずに使ってるな」と判断して流すケースが多いとは思いますが)
いずれにしても、「役不足」という語を使う際には十分注意しましょう。
意味を取り違える原因とは
「役不足」とよく似た表現として「力不足」という語があります。この二つの意味が混ざってしまったため、意味を取り違えているというケースは多いでしょう。この点は文化庁の説明でも触れられています。
「役不足」については、本来の意味である「役目が軽すぎる」よりも「役目が重すぎる=本人の力不足」と理解している人の割合がどの年齢でも上回っています。ちなみに、2012年の調査によると一番正答率が低かった (38.1%) のは50代でした。この年齢層では、「能力不足」の意味で理解している人が6割近く (57.9%) に上っています。もしこの年代の上司から「君では役不足だ」と言われた場合は、本来の意味ではなくネガティブな意味かもしれないので慎重に判断しましょう。
「役不足」という言葉の由来
この語は、役者が自分に与えられた役に不満を抱くという状況から取られています。つまり、「こんな役は自分がやるようなものじゃない=役が自分には不相応で軽すぎる」という考えが背景にあるわけです。こうした成り立ちを理解していると、どのような文脈で「役不足」と言えばよいのか理解しやすいでしょう。
役 (仕事) が本人に見合わず軽い場合は「役不足」、本人の力 (能力) が仕事に見合わず足りていない場合は「力不足」と覚えておけば、間違わずに使い分けできるはずです。
[参考資料]
「役不足」とは,何が足らないのか?―文化庁ホームページ. URL: https://www.bunka.go.jp/pr/publish/bunkachou_geppou/2012_02/series_07/series_07.html
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