英語が第二言語とは限らない
英語を母国語としない生徒への英語教育のことを、以前はESL (English as Second Language) と呼んでいた時期もありました。日本語では「第二言語としての英語」と訳され、生徒の母語=第一言語の次に学習する外国語としての英語という役割が反映されていました。
しかし、非英語圏の学習者がすべて“母語+英語”という枠に当てはまるわけではありません。国際的に話される言語は英語だけではなく、スペイン語やフランス語、アラビア語、中国語なども非常に多くの人が使用する共通語としての側面を持っています。最近では、学習する外国語を選択する際に英語以外の言語を選ぶ生徒も少なくありません。
また、国際結婚により両親がそれぞれ異なる非英語圏の出身である場合、家庭で話している言語だけですでに少なくとも2か国語を数えており、そこから子どもがさらに学習する外国語は第三言語または第四言語となります。(例:親がフランス人と日本人)
あるいは、非英語圏の両親と子どもが別の非英語圏の国で生活している場合も、家では親の母語、学校や普段の生活では現地語を使うこととなり、その状況で学ぶ英語はやはり第三言語となります。(例:日本に移住した日系ブラジル人の家族)
現状を踏まえて、こうした多様な状況に当てはまるより正確な表現となるよう、英語を「第二言語」と定義していたESLに代わり「EAL」という用語が使われるようになったのです。
「EAL」について
「EAL」は English as Additional Language の略で、英語のまま使用されることも多いですが、日本語にする場合は次のように訳されます。
『付加的言語としての英語』
【意味】英語を母語としない生徒への英語教育プログラム
学習においてESLとEALの違いというのは基本的にありませんし、用語の意味も特に変わりません。実際に今でも学習者の多くは英語が初めて学ぶ外国語=第二言語です。ただ、言語習得において英語が生徒の第二言語であると限定しないことにより現状を正確に反映するとともに、教える側が学習者の言語的背景についてより柔軟なとらえ方をするよう促すものともなっています。
EALの日本語訳については、いまだにESLと同じ「第二言語としての英語」と表記している学校も多く見られますが、特に日本人が英語を学ぶ際、ほとんどの場合は英語が第二言語となるのであながち間違いとも言い切れません。他には「付加言語」、「追加言語」など微妙に異なる訳し方をしているケースもあります。
公式の使用例
『付加的言語としての英語』という用語は、文部科学省IB教育推進コンソーシアムのサイトにある用語集で定義されています。(「IB用語集」)
ちなみに、”Additional Language” 単体だと「付加言語」、”EAL” の場合は「付加的言語としての英語」という使い分けがされているようです。
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